噛み合わせ

噛む力と生きる力

口腔内に義歯が入っていても、重要なのは「噛む力」です。
食べ物を噛む力が弱ければ、唾液の分泌も減り、充分な栄養をとることが難しくなります。
軟らかい食品は噛む力が弱くても食べることができますが、そればかりが多くなると、摂取する栄養に偏りが出てきてしまいます。
栄養が偏ってしまうと、体力の低下にもつながるため、高齢者は噛む力が弱まり栄養不良を起こしやすくなってしまうのです。
栄養不良を起こすと、体力が低下し筋力が落ちたり、骨がもろくなりやすくなるので骨折のリスクも上がってしまいます。
噛む力が弱くなると足腰が弱くなり、それがきっかけで寝たきり予備軍につながってしまうこともあります。

「噛み切る力」が弱っている方の場合は、固い食品を食べて噛む回数を増やすことが困難になりますので、食材を柔らかく煮たり、薄切りにしたりするなど工夫をして噛み切りやすいようにしましょう。
一口のサイズを大きくすることで「食材が柔らかくても、噛む回数は多くなる」ということを日頃の習慣にすると良いでしょう。

噛む力は元気の源です。
医学的な根拠は証明されていませんが、少量でも口から食事をとっている人と、栄養は全て点滴や管を通して摂っている人を比べると、口から食事をとっている人のほうが元気で長生きしやすいと言われています。

訪問診療でも
噛み合わせバランスの調整や
治療が可能です

入れ歯や義歯のかみ合わせ調整は訪問診療でも十分に可能です。
強くあたって動揺している天然の歯に関してはあたりを調整し、できる限り抜かずに保存できるように努めています。
グループファンクションドオクルージョン、フルバランスドオクルージョンを駆使して総入れ歯でも適切な噛み合わせへと導きます。

唾液の重要性

唾液の役割

唾液は高い殺菌作用があり、口腔内の細菌を退治する効果があります。
このほかにも、食事をすると唾液出てきて、唾液に含まれる消化酵素の働きにより、食べ物は口の中でさらに小さくバラバラになりますので、飲み込みもしやすくもなります。
噛むことで小さく砕かれ消化酵素と混じりあった食べ物は、飲み込まれると、胃に運ばれます。
胃に運ばれた食べ物は消化しやすくなります。

唾液は病気から体を守ってくれるバリア機能があります。唾液がきちんと分泌されて口の中が潤っていると、体を病原体から守る力が働きます。

2つ目は、歯周病による細菌感染やそれに伴う炎症の広がりが原因なのではないのかと考えられています。
しかし、実際には持続的な菌血症は見られず、歯周病で非生理的血中濃度の上昇も伴いません。
菌血症とは、本来であれば血液は無菌であるのだが、血流に細菌が存在している状態を言います。

また、唾液には強い殺菌作用もありますが、虫歯や歯周病に罹患していると唾液の質が悪くなり、体を守るための免疫能力が落ちてしまいます。
唾液の免疫力を高め、病気に負けない体を作るためには、お口の健康が欠かせません。
口は食べ物を食べ、栄養を摂る入り口としての役割だけでなく、病気の原因となる病原体を体中に入り込まないようにするための器官でもあります。

唾液を出すにはよく噛むこと。そのために噛み合わせが大事です。

年齢を重ねると、唾液の分泌量は自然と減っていく傾向にあります。
しかし、食べ物をよく噛むことで、味覚が刺激されますので年齢に関係なく唾液の分泌量を増やすこともできます。

噛む回数を多くするためには、2つの方法があります。

1つ目は、固い食感の料理や食品を選ぶことです。
2つ目は、食材を大きめにカットして調理をすることです。

固い食感が苦手な方は、食べ物のサイズを大きくカットすることで自然と噛む回数が増えますので、それに伴い唾液の分泌も促されます。

歯は噛むためにとても重要です

固い食感の料理を食べたりするためには、噛む回数を増やさなければなりません。
そのため、健康な歯を保つことが非常に重要になります。
虫歯や歯周病で弱ってしまっている歯や歯茎は、食べ物を良く噛むことで痛みや違和感を感じ、噛むこと自体が苦痛になってしまいます。
歯科治療を受け、歯科医師から「治療が終了しました」と言われるまでは、自己判断で治療を中断してはいけません。
悪くなっている歯の治療が終わっても、ご自身のケアと定期的な訪問歯科の受診はとても大切です。

人工の歯が入っていても挽回できる

加齢とともにお口のトラブルは起きやすく、特に虫歯や歯周病が原因で歯を失う割合も増加します。
一度治療した歯でも、詰め物のすき間や、被せた歯の境い目などから感染し、再度治療が必要な状態になってしまうのです。
丁寧なセルフケアと訪問診療でのケアで、人工の歯が入っていたとしても治療した歯を健康な状態で長く使用することができます。

お口の中の状態は月日の経過とともに日々変化します。そこで大切なのは義歯を含めて、口腔内の定期的なチェックをすることです。
義歯は、装着した当初はぴったり合っていたとしても、歯茎の状態が変化しすき間ができたりたり、入れ歯のバネがゆるくなったりするなどの不具合も出てきてしまいます。
義歯が合わず、噛み合わせが悪くなると他の歯とのバランスが取れず、噛む力が大幅に低下してしまうのです。

顎関節症治療は
噛み合わせ治療の一種です

「顎に痛みがある」「口が開きにくい」「顎の関節からカクカクと音が鳴る」といった症状にお悩みではございませんか?
もしかしたら「顎関節症(がくかんせつしょう)」の疑いがあります。

顎関節症は実際に「この症状は治療を受けたほうがいいのか?」などと悩まれる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そのような症状でお悩みの方のために、顎関節症とはどのような病気で、どのように治療を行うのか、詳しく解説させていただきます。

当院の訪問診療による顎関節症治療では顎が外れやすい形には、可能な限り戻しますが、クセがついたかたには口腔外科にて対処をいただく形になります。

顎関節症の主な症状について

顎関節症には主に次のような症状があります。

・顎の関節や周辺に違和感がある。
・食事をすると顎に痛みがあり、だるさを感じる。
・口を動かしたり、グッと噛みしめたりすると顎の関節に痛みがでる。
・口を開閉させると、カクカクなどと骨の鳴る音がする。
・口が開けにくく、開閉をスムーズに行うことができない。
・下顎が左右にうまく動かない。
・顎が外れてしまう時がある。

また、体のさまざまな部位に顎関節症は影響します。
顎関節症によって、次のような症状が現れることもあります。

・頭痛、首や肩、背中などの痛み。腰痛、肩こりなどの全身にまでおよぶ痛み。
・めまい、耳鳴り。耳が詰まるような感じ。難聴。
・眼の疲れ、充血。涙が出てくる。
・鼻づまりなど鼻の症状
・顎が安定せず、うまく噛み合わない。
・歯や舌の痛み。口腔乾燥。味覚異常。
・食べ物を飲み込みにくい。
・呼吸困難、四肢のしびれ。

顎関節には4つの型があります

顎関節症と一言で言ってもその定義は広く、4つの型に分類されます。
治療方針は4つの型それぞれに基づいてたてていきます。

1:咀嚼筋痛障害
顎を動かす筋肉に障害がでるタイプです。

2:顎関節痛障害
関節周辺の「関節包」や「靭帯」という部分に障害が出て痛みを感じます。

3:顎関節円板障障
顎関節のすき間には「関節円板」という軟骨のような組織があります。その関節円板に障害がでるタイプです。本来の位置からずれたりすることで顎がカクカク鳴り、口の開け閉めがしにくくなります。

4:変形性関節症
顎関節自体の形が変形するタイプです。
関節を元の状態に戻すことは難しく、手術が必要な場合もあります。変形した状態のまま症状を抑え、運動機能の回復を図ります。

顎関節症の原因

顎関節症は、顎に過度な負担がかかると発症してしまいます。
顎に負担がかかるケースは次のようなことが要因となります。

不正咬合

不正咬合とは、正しく歯が噛み合っていない状態を言います。噛み合わせは顎の形なども影響されますが、生活習慣や指しゃぶり・舌癖なども原因となります。
噛み合わせが悪いと、力のかかり方に左右差が出てしまいますので、片側の顎関節だけに負担がかかってしまうのです。

ブラキシズム

ブラキシズムとは、歯ぎしりや食いしばりのことです。
ストレスを感じたときや、重たい物を持った際にも無意識にしてしまいがちですが、睡眠中に起きることが多い症状です。

無意識に食いしばる力はとても強く、強い力で歯を噛み合わせると、さらに大きな負担が顎関節にかかることになります。

歯や顎に強い力がかからないようにするためには、日常的に上下の歯を接触させないよう意識することが大切です。
スポーツ中や睡眠時にマウスピースを使用して、顎に強い力がかからないように予防する方法があります。

頬杖などの無意識の癖

頬杖や食べ物を片側だけで噛む、うつ伏せや横向きになって寝る、といった無意識の癖は顎の関節に負担がかかります。

このような悪い癖がある方は意識して直すよう心がけないと、関節に負担がかかり顎関節症を発症してしまう可能性があります。顎関節症を発症しても、この様な癖が続くと、症状を長引かせる要因にもなります。

頭痛や肩こりなどの慢性的な原因に

顎関節症は慢性化すると、頭痛や肩こり、耳鳴り、めまいなど、体の不調の原因にもなります。
このような症状と顎に違和感や痛みなどがある場合は、顎関節症を見てくれる訪問診療を受診して、診察してもらう必要があります。

顎がずれている可能性がある方は、お顔を見ると、口角を結ぶ線と両目を結ぶ線が平行になっておりません。
気になる方は当院でもチェックできますので、一度ご相談ください。

顎関節症は放置しても大丈夫?

顎関節症は多くの場合、放置していても、いつの間にか改善し自然治癒するといわれています。
特に日常生活に支障がなければ、そのまま治ったりする場合もありますので、あわてて治療をする必要のない病気とも言えるでしょう。

しかし、悪い癖がある方は関節に負担がかかり、関節や周辺組織が変形している場合など、経過を見てもほとんど改善しない場合もあります。
急に口が開けにくくなったなどの違和感が出た方は、関節を整えたり、ストレッチやマッサージを行たりすることで、症状が回復することもあります。

顎関節に違和感がある方は、できれば放置するより一度診察を受け、上記で解説した顎関節症のタイプや原因などを知り、再発を防ぐためにはどうしたら良いのか知ることも大切だと言えるでしょう。

顎関節症の治療について

顎関節症の治療は、次のような方法があります。

1.顎関節症の原因となるものを除去

歯ぎしりや食いしばりは、歯や顎に大きな負担をかけてしまいますので、その原因となる癖を直します。

2.薬による痛みの緩和

痛みがある場合は、鎮痛剤や抗炎症剤などを使用し、顎の痛みを取り除きます。
筋肉の緊張を緩和させる薬も併用することがあります。

3.理学療法

マッサージやストレッチをすることで、筋肉の緊張を緩和させます。

開口訓練: 本来開くべきところまで無理せず大きく口を開ける訓練です
徒手整復: 手を使って、関節円板を正常な位置に戻します。
低周波療法:マイオモニターという医療機器で筋肉に刺激を与え、緊張を和らげます。

他にも、血流をよくするため患部を温める温熱療法などがあります。

4.スプリント療法

スプリントは樹脂(レジン)でできたマウスピースです。
運動をする時や就寝時などに歯に装着して、歯ぎしりや食いしばりで過度の負担がかかる顎関節や筋肉を守ります。
入れ歯の方でも使用できます。

5.顎関節腔内注射

生理食塩水を関節内に注射し関節腔内を洗浄する方法です。
これによって関節痛や開口障害を改善させます。また、関節の動きを円滑にさせるために、ヒアルロン酸製剤を注射することもあります。

1〜4の治療で症状の改善が見込められることが多いのですが、中には改善がみられず、5の外科的治療を選択しなければならないケースもあります。

また、歯科矯正をすることで噛み合わせが整い、顎関節症が改善する場合もあります。
当院では、十分な検査を行い噛み合わせの状態も踏まえたうえで、それぞれに合った適切な治療を患者様にご提案させていただいております。

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